今回は三重県四日市市にて、瓦屋根の谷部分に使用されていた古い銅板を撤去し、ステンレス製の谷板金へ交換する工事を行いました。
瓦屋根というと、
「瓦は何十年も持つから大丈夫」
「割れている瓦もないし、まだ修理はいらないだろう」
と思われている方も多いのではないでしょうか。
確かに瓦そのものは非常に耐久性の高い屋根材です。
しかし、瓦屋根は瓦だけで雨を防いでいるわけではありません。
今回工事を行った「谷(たに)」のように、金属板や防水材など、瓦とは異なる材料が使われている場所があります。
そして、こうした部分が瓦より先に劣化してしまい、雨漏りの原因になるケースがあります。
今回の施工事例では、
「谷とは何なのか?」 「なぜ銅板に穴が開くのか?」 「どのように修理するのか?」
屋根に詳しくない方にも分かるように、実際の工事写真とともにご紹介します。
そもそも屋根の「谷」とは?
屋根には、形状によって2つの屋根面が内側に向かってぶつかる部分があります。
このV字になった部分を、屋根業界では「谷」または「谷部」と呼びます。
谷には左右の屋根面に降った雨水が集まってきます。
その雨水を軒先まで安全に流すために設置されている金属製の板が、
「谷板金(たにばんきん)」または「谷樋(たにどい)」
です。
簡単に言えば、
屋根の上に作られた「雨水専用の水路」
だと思っていただくと分かりやすいです。
屋根面に降った雨が集中する場所なので、谷は屋根の中でも特に雨水の影響を受けやすい重要な部分です。
今回の四日市市のお宅も一見すると普通の瓦屋根

施工前の状態です。
屋根全体を見るだけでは、大きく崩れているようには見えません。
瓦もまだ使用できる状態でした。
しかし屋根は、「瓦が割れていない=雨漏りの心配がない」ではありません。
今回注目したのが、屋根面と屋根面が合流している谷部分です。
既存の谷には銅板が使用されていました。
昔の瓦屋根では、谷部分に銅板が使用されている住宅が多くあります。
銅は耐食性があり加工もしやすいため、昔から屋根に使用されてきた優れた材料です。
ところが瓦屋根の谷として使用した場合、長年雨水を受け続けることで、局所的に薄くなったり、小さな穴が発生したりするケースがあります。
なぜ瓦屋根の銅板に穴が開くの?
これはお客様からもよく聞かれる部分です。
「銅って長持ちする金属じゃないの?」
と思いますよね。
実は、瓦屋根の谷に使われている銅板は、一般的な銅板屋根とは少し環境が違います。
谷には、瓦の表面を流れてきた雨水が集中します。
さらに瓦の端から落ちる雨水が、長期間にわたり同じ場所へ繰り返し当たり続けることがあります。
そのため、銅板の一部分だけが徐々に薄くなり、最終的に小さな穴が開くことがあります。
また陶器瓦の場合、表面に「釉薬(ゆうやく)」が使われているものがあります。
「釉薬(ゆうやく)」とは?
陶器のお茶碗などの表面がツルツルしていますよね。
それと似たもので、瓦の表面に施されているガラス質のコーティングです。
瓦の色を出したり、水を吸いにくくしたりする役割があります。
銅板の谷に穴が開く原因については、雨水が繰り返し当たることによる摩耗、経年劣化、雨水や瓦由来成分の影響など、複数の要因が考えられています。 一つの原因だけで説明できないケースもあるため、「酸性雨だけが原因」などと決めつけないことも大切です。
谷に小さな穴が開くだけでも雨漏りにつながります
ここが非常に重要です。
谷は屋根の雨水が集中する場所です。
通常の屋根面とは、流れる水の量が違います。
そのため銅板に数ミリ程度の小さな穴が開いただけでも、大雨のたびに雨水が入り込む可能性があります。
しかも厄介なのが、
谷板金に穴が開いた瞬間、必ず室内の天井から水が落ちてくるわけではない
ということです。
谷板金の下には防水層があるため、最初のうちはそこで雨水を受けている場合があります。
そのため室内から見て、
「雨漏りしてないから大丈夫!」
と思っていても、屋根の中では劣化が進んでいる可能性があります。
工事開始|まず谷周辺の瓦を一枚ずつ取り外します

谷板金を交換するためには、その上に被さっている瓦を一度取り外さなければなりません。
今回も谷に沿って周辺の瓦を慎重に撤去していきました。
ここで大切なのが、
「瓦屋根だから屋根全部を葺き替えなければならない」というわけではない
ということ。
瓦そのものがまだ使用できる状態であれば、既存瓦を一時的に取り外して保管し、谷板金を交換したあとに再び使用することができます。
「葺き替え(ふきかえ)」とは?
既存の屋根材を撤去して、新しい屋根材へ全面的に交換する工事のことです。
今回は全面葺き替えではなく、必要な谷部分を中心に補修しています。
瓦をめくると昔ながらの「土葺き」が現れました
瓦を取り外すと、その下から大量の土が出てきました。
これを見て、
「屋根の中にこんなに土が入っているの?」
と驚かれる方も多いと思います。
これは「土葺き(つちぶき)」と呼ばれる昔ながらの瓦屋根の施工方法です。
土葺きとは?
屋根の上に土を載せ、その土を使って瓦を固定・調整する昔ながらの施工方法です。
現在の住宅では瓦を木材や釘・ビスなどで固定する工法が一般的ですが、築年数の経過した日本家屋では土葺きの瓦屋根も多く残っています。
今回も瓦を外すと、長年屋根を支えてきた土が確認できました。
こういった部分は普段外から見えません。
だからこそ、実際に瓦をめくった際には、下地の状態まで確認することが大切です。
銅板からステンレス製の谷板金へ交換
新しい谷にはステンレス製の板金を使用しました。
ステンレスは耐食性に優れているため、谷のように雨水の影響を強く受ける部分に適した材料の一つです。

単純に穴の開いた部分へコーキングを塗って塞ぐだけではなく、谷そのものを新しく作り直しています。
「穴だけコーキングで塞げばいい」はおすすめできません
谷の穴を見つけたとき、
「穴のところだけコーキングを塗れば安く済むんじゃない?」
と思われるかもしれません。
コーキングとは?
建物の隙間などに充填するゴム状の防水材です。
シーリングとも呼ばれます。
応急処置として使用するケースはありますが、古い銅板そのものが全体的に薄くなっている場合、一ヶ所を塞いでも別の場所に穴が開く可能性があります。
そのため状態によっては、部分的に穴を塞ぎ続けるより、谷板金そのものを交換した方が安心できる場合があります。
新しい谷を施工したあと、瓦を元に戻していきます
ステンレス製の谷板金を設置したら、取り外していた瓦を一枚ずつ復旧していきます。
谷の左右では、雨水がきちんと谷へ流れ込むように瓦を納める必要があります。
瓦をただ元の場所へ置けばいいわけではありません。
水の流れを考えながら谷との取り合いを納めることが重要です。
「取り合い」とは?
建築業界でよく使う言葉で、
違う材料や違う部位同士が接する場所
のことです。
今回なら、
「瓦と谷板金が接する部分」
などが取り合いになります。
雨漏りは、このような材料同士の境目から発生することも多いため、屋根工事では特に注意する部分です。
棟部分も復旧して工事完了

今回の屋根では谷が棟付近まで入り込んでいるため、施工のために必要な棟部分も一度解体しています。
「棟(むね)」とは?
屋根面と屋根面が山型にぶつかる、一番高い部分のことです。
瓦屋根では丸い瓦や平たい瓦を何段か積み上げて施工されていることがあります。
谷交換完了後は、解体した部分も元の形へ復旧していきます。
これで今回の銅製谷板金からステンレス製谷板金への交換工事は完了です。
瓦が割れていなくても「谷」は点検してください
今回の施工事例で一番お伝えしたいのがここです。
瓦屋根のお客様から、
「瓦だからまだ大丈夫でしょ?」
と言われることがあります。
確かに瓦は非常に長持ちする屋根材です。
しかし、
瓦の寿命=屋根全体の寿命
ではありません。
屋根には、
谷板金、漆喰、防水紙、棟、木下地など、瓦以外にもさまざまな部材が使われています。
その中でも谷は複数の屋根面から雨水が集まる場所。
古い瓦屋根で谷に銅板が使われている場合は、瓦に問題がなくても谷板金だけが劣化している可能性があります。
こんな瓦屋根は一度点検をおすすめします
特に、
- 築年数が経過している瓦屋根
- 一度も屋根点検をしたことがない
- 屋根にV字の「谷」がある
- 谷部分に緑色っぽい銅板が使われている
- 谷板金が黒く変色している
- 雨の強い日にだけ天井や壁が湿る
- 天井に薄いシミが出てきた
- 過去に谷をコーキングで補修している
こうした住宅は、一度谷部分を確認しておくと安心です。
特に銅板の場合、穴が開く前の変色が劣化のサインとして現れることもあります。
雨漏りしてからでは修理範囲が広がることも
谷板金の劣化を放置して雨水が屋根内部へ入り続けると、問題は谷板金だけでは済まなくなることがあります。
防水紙を越えて雨水が侵入すると、
野地板などの木下地の腐食 → 屋根裏への浸水 → 天井のシミ → 室内への雨漏り
と被害が広がる可能性があります。
「野地板(のじいた)」とは?
瓦や防水紙などのさらに下にある、屋根全体を支えている木製の下地です。
ここまで腐食すると、谷板金交換だけではなく木下地の補修まで必要になり、工事範囲も費用も大きくなってしまいます。
だからこそ、
雨漏りしてから直すのではなく、雨漏りする前に見つける。
これが瓦屋根を長持ちさせるポイントです。
四日市市で瓦屋根・谷板金の点検なら株式会社 匠創へ
今回は四日市市にて、瓦屋根の銅製谷板金を撤去し、ステンレス製の谷板金へ交換しました。
瓦屋根は耐久性の高い屋根ですが、瓦以外の部分まで永久に持つわけではありません。
特に谷板金は普段地上からほとんど見えないため、
「雨漏りして初めて劣化に気付いた」
ということも少なくありません。
「うちの屋根にも谷がある気がする」
「銅板が使われているか分からない」
「瓦屋根を何年も点検していない」
そんな場合でも大丈夫です。
無理に屋根へ上がって確認するのは危険ですので、専門業者による点検をおすすめします。
株式会社 匠創では、四日市市をはじめ三重県内の瓦屋根・谷板金・雨漏りの点検や修理に対応しています。
小さな劣化を早い段階で見つけることが、大きな雨漏りや高額な修理を防ぐことにつながります。
「まだ雨漏りしていないから大丈夫」ではなく、 「雨漏りする前に一度確認しておく」。

瓦屋根にお住まいの方は、ぜひ一度屋根の状態を確認してみてください。

